頚椎症性神経根症

頚椎症性神経根症とは、主に20~40代の方に見られる疾患で、首にかかる負担により椎間板が変性(頚椎症)し、骨棘が形成され、これによって頚椎内の細いトンネル「椎間孔」が狭くなり、神経根が圧迫されたり刺激されたりすることで、肩や腕に痛みや痺れが生じる病気です。

【症状】

頚椎症性神経根症の典型的な症状には肩から腕にかけての痛みや、腕や手指の痺れがあります。痛みの度合いは軽いものから激しいものまでさまざまで、頚椎を後方に反らした際に症状が強くなります。

【原因】

頚椎症性神経根症の主な原因は、加齢や不良姿勢による頚椎症の進行です。椎間板の変性や骨棘の形成により神経根が圧迫され、症状が引き起こされます。近年では、スマートフォンやパソコンの利用増加、運動不足などが不良姿勢の要因となり、患者数の増加が見られています。

【治療】

頚椎症性神経根症の治療には保存療法と手術療法があります。

<保存療法>

安静が重要であり、頚椎カラーを使った装具療法や、痛みや炎症を抑えるための薬物療法が行われます。多くの場合、保存療法によって症状が改善されることが期待されます。

<手術療法>

筋力低下が著しい場合や、痛みが強く仕事や日常生活に支障をきたす場合には手術が検討されることもあります。手術は慎重に検討され、患者の状態に合わせた治療計画が立てられます。

頚椎症性脊髄症

頚椎症性脊髄症とは、頚椎(首の骨)、椎間板、椎間関節などが加齢などの影響で変形し、靭帯が肥厚することによって引き起こされる病気です。

【症状】

頚椎症性脊髄症の症状には、両手の痺れや筋力低下、感覚障害が含まれます。手のぎこちなさや小さな物のつかみづらさ、文字の書きづらさが自覚されることがあります。ボタンの着脱やペットボトルの開封が難しくなることもあります。また、下肢のバランスが悪くなり、歩行が不安定になることや、神経が圧迫されて生じる鋭い痛みや筋力低下も見られます。

【原因】

頚椎症性脊髄症の主な原因は加齢であり、軽度のものは無症状で進行することもあります。椎間板の変性が進むと、椎間が狭まり、後方関節の変形性関節症が生じ、慢性の疼痛が引き起こされます。骨の棘が形成され、椎間に架橋が生じることもあります。

【治療】

頚椎症性脊髄症の治療には保存療法と手術療法があります。

<保存療法>

軽度な症状や急性期の痛みには、消炎鎮痛剤や湿布が使われ、筋肉由来の痛みにはトリガーポイントの局所麻酔が効果的です

<手術療法>

手術は保存療法の効果がない場合や、痛みが持続または強くなり、上肢のしびれや痛みが進行して歩行障害が生じた場合に考慮されます。ただし、手術は比較的少数の患者に対して行われます。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニアとは、頚椎(首の骨)の間にある椎間板が加齢とともに変化し、線維輪が損傷され、その結果、椎間板の中心にある髄核や線維輪が脊柱管から飛び出す状態を指します。

【症状】

頚椎椎間板ヘルニアの症状としては、頚部から肩甲背部にかけての痛み、上肢に広がる痛みやしびれ、手指の感覚障害、頚椎の運動制限などが含まれます。症状が強い場合には、書字やボタンのかけ外し、箸の使用が難しくなり、階段の昇降時には手すりが必要になることもあります。

【原因】

頚椎椎間板ヘルニアの主な原因には、加齢による椎間板の変性、姿勢不良によるストレートネック、激しい運動による首への負担が挙げられます。

【治療】

頚椎椎間板ヘルニアの治療には保存療法と手術療法があります。

<保存療法>

頚椎装具の着用による安静、頚椎の牽引、消炎鎮痛薬(痛み止め)の処方が一般的です。

<手術療法>

通常は保存療法や時間の経過により症状が緩和することが期待されますが、症状が改善せず、生活に支障が生じたり麻痺が出現した場合には手術が検討されることがあります。

後縦靭帯骨化症
(こうじゅうじんたいこっかしょう)

後縦靱帯骨化症とは、背骨の中を縦に通っている後縦靱帯が骨に変化する難病の一つで、背骨の動きが悪くなり、様々な症状が現れる疾患です。

【症状】

後縦靭帯骨化症の症状は、背骨が硬く感じられることや背中の痛みが挙げられます。さらに、後縦靱帯の骨化によって脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることで手足のしびれや感覚障害、運動麻痺などの症状が現れることがあります。

【原因】

頚椎後縦靭帯骨化症の原因についてはまだ完全には解明されていませんが、遺伝子、性ホルモンの異常、カルシウム代謝異常、糖尿病、老化、局所ストレスなどが関連している可能性があります。しかし、具体的な原因の特定は難しい状況にあります。

【治療】

頚椎後縦靭帯骨化症の治療には保存療法と手術療法があります。

<保存療法>

神経の圧迫を和らげるために首を固定する装具の使用や、特定の姿勢を避けることが含まれます。また、理学療法や薬物療法を通じて炎症を抑え、筋肉の緊張を和らげて症状を緩和させる努力がなされます。症状の進行を把握するためには定期的な画像検査が行われます。

<手術療法>

明らかな医学的所見や神経の抑圧症状(脊髄圧迫症状)がある場合には、手術が検討されることがあります。ただし、全く症状がない場合は積極的な手術は行われないことが一般的です。

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